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2012/05

エントリー

お試しSS 二幕(fol)

  • 05.27
  • 2012

「夏藻(なつも)」
 八夜が空に向けてぽつりと、そう呟いた。
 時はうららかな昼下がり。踏み鳴らされた土道と沿うように広がった草木の街道、その途中。

 平穏という他なく。八夜と常茂の二人は束の間の休息に身を預けていた。
「またあいつを呼んでるのか? って言うか……よくそんな小さな声で届くもんだよな」
 常茂は関心の声で草むらから起き上がり、視線を空に向けた。

「はい、夏藻は耳がよいので」
「耳がいいって問題か……ね。――ぉ、来たきた」

 声に惹かれたように風が吹き抜ける。二人の髪を揺れるなか、上空で陽をひとつの黒点が旋回し次第に大きくなる。その動きに合わせて八夜は右の手を挙げる。
 すると、羽ばたきと共に八夜の右手首に黒い大烏が舞い降りた。
 夏藻はしばし羽を繕うと、くちばしをしゃくり上げて方角を示すと何度か鳴き声を漏らした。

「それで鴉さまは、なんて仰ってるんだ?」
 城を発ってからの数日、何度と行われた光景。八夜は休憩などの合間を利用して夏藻をどこかへと飛ばしていた。自由な時間に行っているのだから、勝手といえばそれまでだが、疑問も積み重ねれば好奇となり訊ねずにはいられなかった。
「この先の道のことを少々。しばらくは安全に進めそうですよ、遠藤殿」

「なるほど、今までのも含めて偵察だったのか。道理で、人っ気のない道なのに追剥の類に出くわさないと思ったぜ。――あと、遠藤殿はやめてないか、正直かたっくるしいぜ」

「堅苦しいですか? では……常茂殿、でいかがでしょうか?」
 意外そうな顔をして目を丸める八夜、思考というほどの間をおかず答えられた問いに対して常茂は鼻を小さく掻いて。

「ま、少しは軽いかな。というか八夜、歳はこっちが上とは言え立場上、お前のほうが偉いんだから、もっと砕けていてもいいんだぞ?」

「お気遣いありがとうございます、常茂殿。しかし、これも性分なので申し訳ありません」
 すまなさそうに八夜は頭を垂れると、逆効果と悟って慌てて困ったように。
「相分かった。しっかし……俺が童の頃なんて、親父ですら殿をつけた覚えはなかったんだぜ」
「それはそれで、どうかと……。重ねて言いますが、人見知りや遠慮のたぐいではないのでご安心を――」

 頃合と言葉を区切って八夜は立ち上がると、その右肩を定位置と夏藻が陣取る。
「では、そろそろ発ちますか」
 常茂も、身の回りを素手で払って土埃を上げると全身を伸び上がらせた。


 再び歩き始めて周囲の景色も代わり映えのしない間もない刻限。他愛のない話をしながら先を行く中、八夜は片手に乾燥した豆を崩したものを乗せて夏藻への食事を与えていた。
「そういえば常茂殿」
「なんだ?」

「その……常茂殿の支度は、合戦に向かうような格好に見受けられますが、今回の妖異に心当たりがあるのですか?」
 常茂の武装は、八夜が見ただけでも黒の拵えをした打刀が一振り。携帯性を重視した朱塗りの短槍。八夜の背丈と同じくらいの長さを持つ金砕棒。服装こそは小袖に袴と略式の軽装であったが小袖の中には帷子を着込んでいた。
 すべて常茂の私物である辺りは、一角の武人として恥じないものであろうが、対人にしては些か用心がすぎることは武技に疎い八夜でもわかることだった。幸いに人がいないため衆目を集めることはなかったが、城下などであったならさぞ浮いていたことであろう。

「いや、知らんけどな。これだけあれば何か一つくらい効き目があっても罰は当たらんぜ。ああ、それと魔除け代わりに岩塩も、重量なんと一貫! 備えあれば憂いなしってな。どうだ、頭使ってるだろう?」
 背負っていた布袋を指して上機嫌に笑むと、杖のように扱っていた金砕棒を片手で軽々と取り回して空を切り定位置の地面へと突き立てた。

「なるほど。お清めの塩……ですか。しかし――、一貫ですか……よく調達できましたね」
 失礼にならぬようにとしながらも、半ば呆れ顔で八夜は呟く。
 常茂はそれを賞賛の声と受け取り、ことさらに機嫌よく頷き。
「海――敦賀(つるが)が近いからな、懇意にしている商人たちから安く調達したのさ。だから護衛は任せとけ」
 我意を得たりという様子でしたり顔を浮かべると、八夜の肩で夏藻が震えるように、くく、と鳴いた。

「この鴉……笑ってねぇか?」
 鴉の声などわかりようもなかったが、それでも勘が告げているとでもいうように常茂は八夜に問う。
「……どうでしょうね。けど、常茂殿。岩塩は海で採れるわけじゃありませんよ……」
「むう、そうなのか……」
 
 実際は見知った商人たちを集めて妖異を退治することを明かし、善意の出資の名目で妖異に効果のありそうなものを探させた結果である。他にも霊験あらたかとされる怪しげな護符や魚の燻製などもあったりした。
 地元、武家の出であるとはいえ現状は一介の足軽である常茂の言に協力が得られたのは、この話が最終的に殿の耳に入るからといった餌を撒いた強かさの成果ともいえよう。

「で、だ。俺に訊いたということはだ。八夜、お前のほうも妖異に目星はついていないのか?」
 話題を逸らすように、常茂は空を見る。
「目星ですか……南蛮の書物や宣教師の人からの聴取、情報などからどのようなという推測なら。ただ――」

「ただ?」
「腑に落ちない点がいくつか。しかし異国の妖異であることは確かかと」

「そう言われても俺にはさっぱりなんだがな……」
「では情報をまとめるためにも、少しお話をしましょう」

 事の起こりは西方より南蛮の船が来航したことによる。目的は敦賀の豪商と商いを行うためであったが、船員と積荷以外にも乗船した存在がいた。
 密航した妖異の存在。異人の船員の証言によれば陸に着いたと同時、船に乗り込んでいた船員を一名連れてあっという間に逃げ出したという。

「その後は、殿のほうに要請があったので常茂殿もご存知ですよね」
 話を振られ、合点いったと鷹揚に頷く。
「ああ、そういうことか。先日、俺らに下った異人の捜索命令が、それってわけか。確か……遺体を発見した隊の奴らが言ってたな、えらく腐ってたとか何とか」
「はい、直接確認していませんが……人伝いに訊いた限り間違いはないようです。とても数日の間に腐敗したとは思えないほど酷かったと――」

 遺体から個人を特定するのが困難であるほどの腐食であったが、片方の目玉がなくなっていたことを除けば外傷らしきものは認められず、異国の人間特有の服装と体格によって辛うじて、船員であると確認することができていた。
 その後は異国の形式に則り篤く葬られた、までが事件の顛末となる。

「うん? 異国の奴ら、敵討ちだのは言わなかったのか」
「彼らは遺体を確認し弔ったら船に戻ったそうです」
「長い船旅、同じ釜の飯食って苦楽を共にすりゃあ情も湧くだろうに……」
「そこはまぁ、そういうことと納得するしかないですね。彼らなりの流儀なのかもしれませんから」

 異国との取引が盛んになったとはいえ、根底にある文化の違いは相互理解が及ぶほど精通している者は両者皆無に等しい。もっとも、人らしくというならばそこに大きな違いがあるとも思えないのは、八夜も同じ意見ではあった。
「ま、そんなもんか。それで気になる点というのは?」

「ええ、妖異の行動と腐敗の原因です」
 それこそが異国の妖異の仕業となる。のだが……

「まず、長い間密室に近い船内に潜みきっていた妖異がなぜ出る時にわざわざ人質などという回りくどい手段を選んだのか」
 人の足であれば、逃げるまでの安全として人質が必要になる。しかし、件の妖異は瞬く間に消え去り、領内へ苦もなく忍び込んだとすれば、荷物となる足手まといでしかない。可能性としては食人の嗜好だが、食べるわけでもなくただ腐らせただけ。と、八夜にはどうしようもなくおかしな事態だと思えた。

「気にしすぎなんじゃないのか? 枕返しがどうして枕ひっくり返すのか、みたいなことなら考えるだけ無駄だろう」
「はあ……確かに一理はあるのですが、気になったのは領内で起きた事件と重ねるとまた違った見方になるのです」

「他になんかあるのか?」
 常茂に促されるようにして八夜は言葉を継ぐ。
「はい。出立前に、確認を取った情報ですが異人の遺体が見つけた時、隊の方が有り得ないものを見たと」

 見たものとは、近隣の村の人間。
 それだけならば何の問題もないはずだが、その人間というのはひと月ほど前に飢饉と病で亡くなった人間で目撃者は飢饉と病の折に埋葬したのをしかと確認したという。
「死んだ人間がねえ……こういうのは黄泉還りって言うのか?」
「そうですね。日ノ本の妖異にはまず見られぬ特徴とも思います」

 罪人の死体を運び去る火車、遺体を喰らう魍魎。共に死者に関連はするものの、死人を動かす存在ではない。近しい存在を探すと大陸の僵屍(きょうし)となるのだが、こちらは人を喰らいはしても腐らせることはない。
「結局、目星はつかないんだな?」
「いえ、南蛮のほうには吸血鬼(ばんぱいあ)という珍しい鬼がいるそうです。人の血を吸ってその相手を食人の鬼に変えて使役するとか」

「ならそいつなのか?」
「まあ、可能性自体は否定できないという範囲ですね」
「……結局は見つけてぶった切るまでわからないってことだな」
「ですね。あともう少しでその村に着きますよ。護衛よろしくお願いしますよ、常茂殿」

 道の先、陽に照らし出された廃村が二人の視界に入って来た。

小さいって事は良い事だ!(藤田)

  • 05.20
  • 2012

HPの改装が行われないのは、予定していた追加コンテンツがボツったからであります……考えたのは俺……orz

本来であればリアルタイム制作日記が追加される予定だったのですが、現在「葬送カノン」は重要ではあるものの地味な作業が暫く続くので、面白くない、という結論に。ですが制作振り返っての「葬送カノン制作記」は、このブログの新カテゴリとして追加できたらいいなぁ、と思ってはおります。思ってはいるが実装できるかは別問題……とりあえず一年間トップページがそのままというのは、避けたいなぁ……

しかし「葬送カノン」制作は少しずつですが確実に進行しております。本当ですよ。俺が「4月に公開!」「夏ぐらいには……」「……年内?」と言う事がコロコロ変わってるのは、何か問題が発生した、というのはあまり無くてですね、単純に俺の読みが間違っていただけですごめんなさい!ひなみやさんに「半分ぐらいのボリュームだった『青春カルテット』が1年半かかったのに、『葬送カノン』が半年で終るわけないですよね(#^ω^) 」と暗に「寝言は寝て言え」と怒られました。反省。

以前もお話したのですが主要キャラの立ち絵はラフOK出てまして、今線画中なのですが、何度でも言いましょう。ヒロインズがめちゃくちゃ可愛いですよー男共もカッコイイのですがヒロイン凄く良いよー。俺がシナリオ担当したヒロインは例に漏れずろーりーな感じでお願いしまして、身長も一つ抜けて低くしたのです。しかし!線画にあたって立ち絵キャラの身長比をシナリオ班でチェックしたのですが、それを見たホコロさんから「私の担当したヒロインも小さいほうが可愛い!」との意見が出まして、それにあわせてホコロさん担当のヒロインも小さくしたのですよ。

実はその時口に出さなかったものの俺は「チッ!俺のヒロインのちっちゃいという個性が薄れるじゃねーか」と思っておりました。だが!小さくして、ヒロインズを並べてみると

なに、この爆発キューティーなヒロインズは

小さいヒロインが並ぶ事によってお互いの個性を打ち消すのではなく、むしろ引き立てあっている!これがホコロさんの狙いか……!
あと男共との身長差も大きくなったので、男キャラが割とたくましく見える、これも中々良かったです。ついでにお願いしている絵師さんの絵柄は可愛い方向なので、その良さを引き出している気もしました。

全部に当て嵌まるわけではないですが、小さいヒロイン良いですよーヒロインにパンチ力が欲しい方は思い切って縮めてみてはどうでしょう?ガ〇ダムだって宇宙世紀としては時代が進むと共に小型化してますし、サイズが小さくなる事で淘汰を生き残った生物も多いですし。
……そしてついでにおっぱいも小さくしたらいいんじゃないかなーおっぱいも小さくしたら良いんじゃないかなー(二回)微乳に!貧乳に!ちっぱいに!でもまな板は駄目だ、むにゅって出来るぐらいが丁度良い。一時の盛隆は無い物の愛好者は多いはずです。もしイオンちゃん(ランドリオールもシェルノサージュも)のおっぱいが大きかったら歴史は変わってますね大きく!大きく!でもおっぱいは小さく!おっぱいは小さく!(二回)

このまま貧乳愛好サークルとして名を挙げればいずれ天下も取れるはずじゃ……ワシが日本統一じゃー!!

あれ、またオチがない……えー、あー、貧乳女性のダイエット中の腹の肉をかけまして、この記事と解きます。そのこころは!オチ、ナイ!

……石を投げるのやめてー

密室ヒキコモリ云々。(遠野)

  • 05.14
  • 2012

唐突ですが、ミステリにおけるトリックの中で一番わかりやすいのは密室トリックではないかと思うわけです。
部屋の窓には内側から鍵が掛けられており尚且つ一つしかない出入り口である扉にも内側から鍵が掛かっている。
実は秘密の隠し通路が存在した!なんてアンフェアなことを除けば、物理的に考えて密室の作り方については三つ(場合によっては四つ)考えられるのです。
その三つとは、
1.密室の中には被害者だけがいて、犯人は外側から何らかの方法で密室を作り上げた。
2.密室の中には被害者も犯人もいて、犯人は内側から何らかの方法で密室を作り上げた。
3.密室の中には犯人だけがいて、犯人は内側から何らかの方法で(ry
と、なるわけです。
ね、簡単でしょう?(魔法の言葉)
例外として、
4.密室の中には被害者も犯人もいない。
というものもあるにはあるのですが、それはそれ。
一般的な密室トリックは上記の三つで分類出来るはずです。
冷静になって見れば「ああ、そんな簡単なことなのか」と思う人も間々いるのでは?
……って、あれ。
これどっかで話したネタでしたっけ?
今、ひどくデジャビュの感が……。

とりま、この方法を用いれば大体の密室トリックの仕組みが透けて見える。はず。
それでも最近はトリック重視の「本格ミステリ」よりは、犯人の心情やら動機をメインに据えたあれの方が人気らしいですね。
所謂ハウダニット?よりホワイダニット?みたいな?フーダニット?
よくわかんないや。(結論)

ミステリと言えば、犯人が実は探偵役!とか実は警察が!とか語り部が!とかそれはそれは腐るほどあるわけですが、実は犯人はこの小説を読んでいる読者!っていうパターンはまだまだ開拓の余地があるらしいですよ。
個人的には死んだ人物が犯人!なんてのが好きですが、犯人が誰々という点で奇をてらうのもアリですよねー。
誰かそういう小説書かないかなーと思う今日この頃の遠野でした。

黄金の向こう(ホコロ)

  • 05.07
  • 2012

自分が更新する番だというのに、なぜかその番は来週だと思い込んでいたホコロです。

これはあれですね、ゴールデンウイークのせいですね。

 

そんなゴールデンウイーク明けの夜です、こんばんは。

ゴールデンウイーク前と変わらぬ日々が戻ってきただけだというのに、疲労感がハンパない気がする夜でもあります。

こんな夜は、五月病という言葉が脳裏を過ぎります。

五月病……みなさん、経験ありますか?

私はあんまりピンときません。

新しい環境になって一ヶ月という境より、一年半というどういう境かようわからんところでガックリくる傾向がある気がします。

というか、そもそも年中五月病?

五月病は減少傾向にあり、年中五月病状態にある人がうなぎのぼりだそうで。

ストレス社会だから! そう言っとけばOKな気がしてきますね。

三年寝太郎はニートなんだよ!

昔はニートいっぱいいたんだよ!

 

さて、そんな感じでヤンデレ妹ヒロインの出てくるシナリオ書きました「葬送カノン」。

私に出来る作業が減り、しばらくヒマを持て余すお達しが出ているのでなんか書きたいなと思っているのに筆が乗らない今日この頃。

アイデアを物語りに昇華させるには……

水と砂糖を煮詰めるとベッコウ飴が作れます。

そんな感じにナイスに煮詰まらないかなと思う黄金週間でした。以上。

 

なにを書くか何時間もパソコンとにらめっこして、出来上がったのがこれかと思うとまだまだだなぁと思いますね!

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